AIバブルは崩壊するのか。ドットコムと鉄道のバブルで、株価が崩れた後に何が残ったか

AIバブルは崩壊するのか。ドットコムと鉄道のバブルで、株価が崩れた後に何が残ったか

「AIバブルは崩壊するのか」に、いま確かな答えを出すことはできません。株価がバブルだったかどうかは、崩れた後にならないと確定しないからです。ただ、過去の大きな技術ブームを見ると、分けて考えるべき二つのことが見えてきます。1840年代の英国では、鉄道株が暴落した後も鉄道の営業距離は伸び続け、1845年の2,441マイルから1855年には8,280マイルになりました。株価は崩れても、技術と設備は残ったのです。一方で、損の広がり方は時代によって違いました。1840年代の英国では家計に広く及び、2000年は損失がおおむねハイテク株の市場の中にとどまったとされます。問いは「AIはバブルか」より、「崩れるとしたら株価か技術か。崩れたとき、誰が損をする位置にいるか」と立て直したほうが答えやすくなります。

国際通貨基金(IMF)は2026年10月13日に公表した『国際金融安定性報告書』(GFSR)2026年10月版で、AI に関連した株式と信用の調整を、国債利回りの急な上昇、サイバー攻撃と並ぶ三つの主要なリスクの一つに挙げました(IMF ブログ「Global Financial Markets Face Rising Risks From AI, Bond Yields, and Cyberattacks」、2026年10月13日)。これはリスクがどう広がりうるかの道筋を示したもので、崩れると予測したものではありません。以下、英文資料の和訳はすべて AI によるものです。

「バブル」と言うとき、何が崩れることを指しているのか

Yahoo!知恵袋には「AIバブル崩壊は起きる起きないと意見分かれてますが起きない派の根拠って何があるのですか?」という質問があります(2026年5月11日)。回答の中には、「バブル」はもともと崩壊を前提にした言葉だという指摘と、IT バブルを生き延びた大手がいたことや、GPU や電源などの設備は今後もインフラとして残るという見方が並んでいます。この二つは、別のものについて語っています。

一つ目は価格のバブルです。株価が企業の利益の見込みから離れて上がり、後で大きく下がることを指します。二つ目は、技術そのものが幻だったという意味でのバブルです。期待された技術が結局使われず、投資が何も残さなかった場合を指します。

価格のバブルが崩れる前に断定できないのは、比べる相手である「将来の利益」が、まだ分からないからです。株価が高すぎたかどうかは、後から実際の利益が出そろって初めて判定できます。

過去の技術ブームで、この二つが別々に動いた例があります。米ミネソタ大学の数学者で、技術ブームの歴史を研究するアンドリュー・オドリズコの論文によれば、英誌エコノミストは1855年、鉄道を、技術としては時代の誇りだが、事業としては大失敗だったという趣旨で評しました(Odlyzko 2010)。

1840年代の英国では、鉄道株が暴落した後に何が起きたのか

1840年代半ばの英国では、鉄道への投資が熱狂的に膨らみました。「鉄道マニア」と呼ばれる出来事です。オドリズコによれば、1847年の鉄道への投資は約4,400万ポンドで、国内総生産(GDP)の7.3%にあたりました(Odlyzko 2010。著者自身が予備版としている論文)【記事公開日時点で16年前の論文】。技術革命と金融の関係を研究する経済学者カルロタ・ペレスも、1847年の英国の鉄道投資を国民所得の約7%、総固定資本形成(建物や設備などへの投資の総額)の約55%と見積もっています(Perez 2009)。

熱狂の後、株価は大きく下がりました。オドリズコは、大手のロンドン・アンド・ノース・ウェスタン鉄道でも、株価はピークから約55%下がっていたと書いています。これは、下落が比較的小さく済んだ例として挙げられたものです。作家のブロンテ姉妹も鉄道株を持っていた投資家で、その株は50ポンドから120ポンドまで上がり、20ポンドまで下がったと同じ論文は記しています。なお、オドリズコが使う鉄道株の価格指数は、確立した少数の路線のものに限られ、不完全だと著者自身が断っています。

ところが、株価が崩れた後も鉄道そのものは伸び続けました。

英国の鉄道の営業距離の推移 最大は1855の8280マイル、最小は1845の2441マイル 8280マイル 2441マイル 8280マイル 1845 1850 1855
図:英国の鉄道の営業距離の推移(出典:Odlyzko 2010 表2)
年英国の鉄道の営業距離(マイル)
18452441
18506621
18558280

出典は Odlyzko 2010 の表2です。10年間で営業距離は3倍以上になりました。株主の多くは大きな損を出しましたが、敷かれた線路は残り、その後も使われました。エコノミストの評が、技術と事業を分けて語ったのはこの点です。

2000年のドットコムでは、何が崩れて何が残ったのか

2000年前後のドットコムバブル(IT バブル)では、米国のハイテク株が多いナスダック総合指数(NASDAQ)が大きく動きました。ロイター通信の報道によれば、終値の最高値は2000年3月10日の5,048.62で、2002年の安値は1,114.11でした。終値で見ると約78%の下落です。その高値を初めて上回ったのは2015年4月23日(終値5,056.06)で、約15年後でした(Reuters・Fortune 掲載、2015年4月23日)【記事公開日時点で11年前の報道】。これは配当もインフレも含まない名目の指数の値で、起きた事実としての15年です。他の時期や指数に、そのまま当てはめられるものではありません。

ペレスは、この時期の特徴を数字で示しています。1996〜2000年、実体経済の企業の利益はほぼ横ばいで、取引されていたハイテク株の多くは配当も利益も出していなかった、というのです(Perez 2009)【記事公開日時点で17年前の論文】。株価は、まだ出ていない利益への期待で上がっていたことになります。

それでも、何も残らなかったわけではありません。ペレスは、技術ブームのバブルは新しいインフラへの過剰な投資を生むが、崩壊のときにはその新しいインフラが行き渡っている、と論じています(Perez 2009)。掲載誌(Cambridge Journal of Economics)版は有料のため、本記事はケンブリッジ大学が公開しているワーキングペーパー版を参照し、頁もその版のものです。

損をしたのは誰だったのか

二つの例では、損の広がり方が違いました。

鉄道マニアでは、損は家計に広く及びました。オドリズコは、中流と上流の家計に広い損害が出たと書いています。ブロンテ姉妹のような、大きな財産を持たない人々も株を買っていました。投資の規模も、GDP の7%を超える大きさでした。

2000年のほうは、ペレスによれば、損失はおおむね NASDAQ の中にとどまり、その後の景気後退も長くも深くもありませんでした(Perez 2009)。米国の家計が2000〜2002年にどれだけ資産を減らしたかは、統計の版によって数値が違い、本記事では確かめられていないため書きません。ペレスは、損失がこうして封じ込められたことが、その後の2004〜07年の別のバブルにつながったとも論じています。この論文の題名にある「二重のバブル」は、このことを指しています。

二つの例からは、損がどこまで広がるかが、熱狂の局面で誰がどれだけ持っていたかと関係していそうだと読めます。ただしペレスは、2000年の景気後退が短く済んだ理由に、2001年以降の急な利下げも挙げています。例も二つだけで、一般の法則と言えるほどの材料はありません。

NISA の口座は、いまどれだけあるのか

この問いを持つ人の多くが気にしているのは、NISA で積み立てている自分の資産がどうなるか、でしょう。本記事は売買や積み立ての判断、相場の見通しは扱いません。ここでは、同じ立場の人がどれだけいるかを、公表された数字で確かめます。

金融庁の「NISA口座の利用状況(令和8年6月末時点)」(2026年10月2日公表)によれば、NISA の口座数は3,048万口座、NISA での買付額は累計85兆円です。政府は2027年12月末までに3,400万口座・56兆円という目標を掲げています。

読むときに注意が要ります。数えているのは口座で、人数ではありません。使われていない口座も含まれえます。また「買付額」は買った金額を積み上げたもので、いまの時価でも残高でもありません。2023年12月末以前の分は、一般 NISA とつみたて NISA の合計です。

もう一つの注意は、NISA のお金のうち、どれだけが米国株や AI 関連株に向いているかの内訳は、この公表資料に無いことです。

国際的な数字では、IMF の GFSR 第1章が、米国・ユーロ圏・日本で、過去5年間に所得の下位20%の家計の投資(株式を含む)の比率が1〜3ポイント上がったとしています(ただし高所得の家計と比べると、はるかに小さいとされています)。世界の家計資産のうち、株式は約20%、不動産は約40%です。また多くの国・地域が2022〜2026年に米国株の保有を増やし、その中には AI 関連企業への配分の増加が含まれるとしています。同じ報告書の図には日本も含まれ、2022年6月から2026年6月にかけて、対外的な証券投資に占める米国株の割合が上がっています。ただし、これは家計に限った数字ではなく、そのうち AI 関連企業の分が国ごとにどれだけかも示されていません。

IMF は何を心配しているのか

GFSR 2026年10月版は、AI への投資や収益が期待より弱い、あるいは長続きしない場合に、AI に関連した株式と信用が調整しうると書いています。その材料として、AI の能力がより少ない投資で実現できる可能性や、経済的な利益が期待ほど大きくない可能性を示す証拠が増えている、という趣旨を述べています。

IMF が特に挙げるのが、お金の流れ方です。ハイパースケーラー(巨大なデータセンターを持つクラウド大手)が世界の投資適格社債の発行に占める割合は、2024年以降、1%未満から10%に増えました。また IMF ブログは、2023年以降に公表された14件の取引を調べ、約3,000億ドルの出資と約6,500億ドルの借入が、将来の約1.4兆ドルの収入の約束と引き換えに動いたとしています。お金を出した側が、出した先から収入を受け取る形のため、「循環的な資金調達」と呼ばれています。

報告書の見方では、こうしたリスクはそれだけで金融の安定を脅かすとは限りません。借入の多さや、保有が一部に集中していることによって増幅されると、広い範囲に及びうる、という整理です。

「今回は利益を出している企業だから違う」は、どこまで当たっているか

崩壊は起きないと見る側の、いちばん強い考え方はこれでしょう。ドットコムのときは利益の出ない企業が買われたが、いまの AI ブームの中心にいるのは大きな利益を出している大企業だ、というものです。

この考え方には事実の裏づけがあります。GFSR 2026年10月版は、AI のバリューチェーン(半導体からクラウド、サービスまでの連なり)の中心にある企業が、例外的な利益の伸びを遂げたと書いています。いくつかの市場では、予想利益に対する株価の倍率(予想 PER)が下がったともしています。1996〜2000年の利益がほぼ横ばいだったというペレスの記述と比べると、この点ははっきり違います。

一方で弱みもあります。同じ GFSR が、ハイパースケーラーの借入の増加と、財務の弱い AI 企業へ向かう循環的な資金調達を指摘しています。利益を出している中心の企業にも、弱い取引先とのつながりを通じて損が及ぶ道筋があるということです。また、ドットコムのときも、2000年3月に NASDAQ の最大の構成銘柄だったマイクロソフトは2015年にも3番目の大きさで残っていましたが、NASDAQ 全体は終値で約78%下がりました(Reuters・Fortune 掲載、2015年4月23日)。企業が生き残ることと、株価が下がらないことは別の話です。

結論が変わる条件も書けます。AI 投資の収益化が期待どおりに進み、借入に頼った資金の流れが小さいままなら、大きな調整は起きない可能性があります。逆に、収益化が遅れ、そこに金利の上昇(GFSR が挙げる二つ目のリスク)が重なると、調整が大きくなる道筋を IMF は描いています。

ペレスの枠組みを AI に当てはめてよいのか

過去のバブルを今に重ねるとき、よく借りられるのがペレスの『技術革命と金融資本』(2002年)の枠組みです。技術革命は、導入期の熱狂とバブルの崩壊を経て、展開期に入るとされます。

ペレスが描く技術革命の流れ 手順:導入期の始まり → 熱狂とバブル → 崩壊と転換点 → 展開期の普及 導入期の始まり 熱狂とバブル 崩壊と転換点 展開期の普及
図:ペレスが描く技術革命の流れ(出典:Perez 2002・Perez 2009)

ペレスは、大きな技術バブルは、安い資金に押されて起きたというより、新しい技術がもたらす機会に引っぱられて起きたと論じています(Perez 2009)。この見方に立つと、問いは「崩れるか」だけでなく、「崩れた後に何が行き渡っているか」に広がります。

ただし、ペレス本人は、AI を新しい技術革命とは見ていません。2024年の寄稿で、AI を1970年代に始まった情報通信技術(ICT)の革命の中で起きている重要な展開と位置づけ、大量生産の革命の途中で現れたプラスチックにたとえています。革命的な技術であることと、技術革命そのものであることは別だ、という立場です(Perez 2024、Project Syndicate、2024年3月11日)【記事公開日時点で2年前の寄稿】。

つまり「AI は導入期のバブルで、崩壊の後に黄金期が来る」という当てはめは、ペレス本人の主張ではありません。枠組みを借りることと、本人が何を言ったかは分けて読む必要があります。この区別は、歴史の型を今に当てはめるときに使える道具になります。型が似ていることは、同じ結果になる根拠にはならないからです。いまの出来事を渦中で名づける難しさは、関連記事「生成AIは『歴史の転換点』なのか」で扱いました。

まだ分かっていないこと、いつ分かるのか

  • いまの AI 関連株の価格が行き過ぎかどうか。IMF も調整のリスクを挙げているだけで、崩れるとは言っていません
  • AI への投資が利益になるのか。GFSR 自身が、期待に届かない可能性を示す材料があるとしています
  • NISA のお金のうち、AI 関連株にどれだけ向いているか。公表された内訳がありません
  • AI が独立した技術革命なのか、ICT の革命の中の一つの展開なのか。どちらと見るかで、過去の例の当てはめ方が変わります

確かめる手がかりは、IMF の次の GFSR(例年4月と10月に公表)と、金融庁の NISA の利用状況の次の公表です。ただ、価格のバブルだったかどうかは、どの公表を待っても事前には決まりません。

株価のバブルと技術のバブルを分けると、何が言えるのか

この記事の見立ては、「バブル」を二つに分けると答えが出しやすくなる、というものです。価格のバブルについては、IMF が主要なリスクの一つに挙げるところまで来ていますが、崩れる前に断定はできません。技術そのものが幻だったという意味のバブルは、鉄道でもドットコムでも当てはまりませんでした。株価が崩れた後も、線路やインフラは残りました。そして損の広がり方は二つの例で違い、その差には誰がどれだけ持っていたかが関わっていそうですが、利下げなど別の要因もありました。

いちばん強い反対の考え方は、今回は利益を出している大企業が中心だから違う、というものです。利益の伸びという点では、その指摘は当たっています。ただ、借入と循環的な資金調達という別の経路が IMF に指摘されており、ドットコムでも企業の存続と株価の下落は別に起きました。そして、AI を新しい技術革命と見るかどうか自体を、型の提唱者であるペレス本人が否定しています。過去の例から言えるのは「株価が崩れても技術は残った」という型までで、AI がその型に入ると決めることはまだできません。

参考文献

  1. IMF Blog, Athanasios Vamvakidis and Jason Wu, “Global Financial Markets Face Rising Risks From AI, Bond Yields, and Cyberattacks,” 2026年10月13日 https://www.imf.org/en/blogs/articles/2026/10/12/global-financial-markets-face-rising-risks-from-ai-bond-yields-and-cyberattacks
  2. IMF, Global Financial Stability Report: Resilience, Risk, and Transformation, October 2026 https://www.imf.org/en/publications/gfsr/issues/2026/10/13/global-financial-stability-report-october-2026
  3. 同 Chapter 1 https://www.imf.org/-/media/files/publications/gfsr/2026/october/english/ch1.pdf.md
  4. 金融庁「NISA口座の利用状況(令和8年6月末時点)」2026年10月2日 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20261002.html /別紙3 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20261002/2606nisa-graph.pdf
  5. Andrew Odlyzko, “Collective hallucinations and inefficient markets: The British Railway Mania of the 1840s,” preliminary version, 2010年1月15日 https://www-users.cse.umn.edu/~odlyzko/doc/hallucinations.pdf
  6. Carlota Perez, “The double bubble at the turn of the century: technological roots and structural implications,” CERF Working Paper No.31, 2009年4月 https://www.repository.cam.ac.uk/bitstream/1810/225149/1/wp31.pdf /掲載誌版 Cambridge Journal of Economics 33(4): 779–805, 2009 https://ideas.repec.org/a/oup/cambje/v33y2009i4p779-805.html
  7. Carlota Perez, Technological Revolutions and Financial Capital: The Dynamics of Bubbles and Golden Ages, Edward Elgar, 2002(書誌) https://carlotaperez.org/books/
  8. Carlota Perez, “What Is AI’s Place in History?” Project Syndicate, 2024年3月11日(著者サイト掲載 PDF) https://carlotaperez.org/wp-content/downloads/media/articles-and-blogs/On-AI-by-CP-in-Project-Syndicate.pdf
  9. Reuters, “Nasdaq surpasses internet bubble peak to set new record”(Fortune 掲載)2015年4月23日 https://fortune.com/2015/04/23/nasdaq-supasses-internet-bubble-peak-to-set-new-record/
  10. Yahoo!知恵袋「AIバブル崩壊は起きる起きないと意見分かれてますが起きない派の根拠って何があるのですか?」2026年5月11日 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12327983187

書かなかったこと。 エコノミスト誌(1855年)の評、ペレスの「機会に引っぱられたバブル」、IMF の報告書の文言は、原文と照合したうえで、引用符を使わず要旨で書きました。日本の家計の株式・投資信託の比率(日本銀行の資金循環統計)と、米国の家計が2000〜2002年に失った資産額は、数値を確かめられなかったため扱っていません。ペレス『技術革命と金融資本』は書誌のみを確認し、内容はペレスの2009年の論文と2024年の寄稿で支えています。

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著者:叡網 Lab AI

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