ビールは下げて、安い缶は上げた。酒税はなぜ一本化されたのか

ビールは下げて、安い缶は上げた。酒税はなぜ一本化されたのか

2026年10月1日、ビール・発泡酒・第3のビール(新ジャンル)の酒税は、350ml缶1本あたり54.25円にそろいました。2017年度の税制改正で決まり、2020年から3段階で進めてきた最後の段階です。ビールは63.35円から下がり、発泡酒と第3のビールは46.99円から上がりました(財務省「酒税改正(平成29年度改正)について」)。

財務省は理由を、似た酒どうしの税率の差が商品開発や販売数量に影響している状況を改め、酒類間の「税負担の公平性を回復する」ためと説明し、全体の税収は増やさない「税収中立」で行うとしています(財務省「酒税に関する資料」)。ただし、安い缶を選んできた人にとっては、2020年9月までの28円からほぼ倍の負担になったのも事実です。

2023年6月、Yahoo!知恵袋に、ビールと発泡酒の税率が同じになるそうだが、なぜビールの税率を下げる必要があるのか、発泡酒より高めのままでよいのではないか、という趣旨の質問が投稿されています(Yahoo!知恵袋)。この疑問に、一次資料で答えられる範囲から順に答えます。


2026年10月、1缶の税金はいくらになったのか

350ml缶1本あたりの酒税額の推移は次のとおりです(単位:円。財務省 d07_0.pdf、税制調査会 説明資料 p.55)。

新ジャンル1缶(350ml)あたりの酒税 最大は2026年10月の54.25円、最小は2020年9月までの28円 54.25円 28円 54.25円 2020年9月まで 2020年10月 2023年10月 2026年10月
図:新ジャンル1缶(350ml)あたりの酒税(出典:財務省「酒税改正(平成29年度改正)について」)
時期ビール(円)発泡酒・麦芽25%未満(円)新ジャンル(円)チューハイ等(円)
2020年9月まで7746.992828
2020年10月7046.9937.828
2023年10月63.3546.9946.9928
2026年10月54.2554.2554.2535

2023年10月からは、新ジャンルは税法の上で「発泡酒」の区分に入りました(説明資料 p.58)。表の新ジャンルの列の2023年10月以降は、発泡酒としての税額です。

1klあたりで見ると、ビール系はすべて155,000円、チューハイ等は100,000円です(財務省「酒税の税率」令和8年10月1日現在)。ビールは2020年9月までの1klあたり220,000円から65,000円下がり、新ジャンルは80,000円から75,000円上がった計算になります(350ml換算の値を1klに直した算術)。


なぜビールは下がり、安い缶は上がったのか

答えの中心は、「同じような酒には同じ税を」という考え方です。財務省は改正の目的を、税率の差が商品開発や販売数量を左右している状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復することだと説明しています(財務省「酒税に関する資料」)。

では、なぜ真ん中の発泡酒の水準(46.99円)にそろえず、54.25円にしたのか。鍵は「税収中立」です。改正の前提として、税収の総額を増やしも減らしもしないことが掲げられています(税制調査会 説明資料 p.54【記事公開日時点で9年前の資料】)。税収中立は清酒・果実酒の見直しも含めた改革全体での話ですが、ビール系では、量の多いビールの税率を大きく下げれば税収が減るので、その分を発泡酒・新ジャンル・チューハイ等の引き上げで埋める形になります。どの水準でそろえれば総額が変わらないかの計算過程は、確認した資料には示されていません。

同じ説明資料は、改正後のビールの税率を、価格との比較で見て戦後最低の水準だと位置づけています(p.56)。一方で、厳しい財政状況と、税収を得る品目(財政物資)としての酒の位置づけも前提として書かれています(p.54)。酒から税を取ること自体をやめる改正ではありません。

急に変えると消費者や製造者への影響が大きいので、2020年・2023年・2026年の3段階に分けたとも説明されています(同 p.54)。


税金に合わせて、商品が作られてきたのか

財務省は、税率の差が商品開発と販売数量に影響したと認識しています。統計にも、その動きと重なる変化が見えます。国税庁の課税数量(税がかかった量)の推移は次のとおりです(単位:千kl、国税局分と税関分の合計。国税庁「酒のしおり」令和7年7月 表7【記事公開日時点で1年前の統計】)。

ビールの課税数量の推移 最大は1994年度の7413千kl、最小は2020年度の1828千kl 7413千kl 1828千kl 2345千kl 1989年度 2023年度
図:ビールの課税数量の推移(出典:国税庁「酒のしおり」令和7年7月)
年度ビール(千kl)発泡酒(千kl)
1989年度63200
1994年度741331
1995年度6979252
1998年度61651075
2002年度42992646
2005年度36421699
2010年度2943967
2015年度2764767
2019年度2354596
2020年度1828604
2022年度2209586
2023年度23451231

発泡酒は1994年度の3万1千klから、2002年度には264万6千klまで増えました。同じ時期にビールは741万3千klから429万9千klに減っています。ただし、この表だけでは「税率の差が原因だった」とは言えません。言えるのは、税率の差があった時期に安い区分の量が伸び、財務省自身がそれを税率差の影響と見ている、というところまでです。

新ジャンルについては、さらに注意が要ります。新ジャンルは課税統計の中で独立した品目として数えられておらず、2023年10月までは「その他の醸造酒(発泡性)」や「リキュール(発泡性)」に含まれていました。これらにはチューハイ等も入るので、新ジャンルだけの量は国税庁の表から取り出せません。2023年度に発泡酒が58万6千klから123万1千klへ倍増しているのは、新ジャンルが発泡酒の区分に移ったためで、売れ行きが倍になったわけではありません。同じ年度にリキュールとその他の醸造酒等が合わせて約85万kl減っています(同 表7)。

説明資料 p.58 は、ホップを使う商品や、色や苦みが一定以上の商品を発泡酒の定義に加え、新ジャンルを「将来的に開発されうる類似商品も含めて」取り込む改正内容を示しています。税法の区分の境目に合わせて商品が設計されてきたことを、政府の資料自身が前提にしている、と読めます。なお、ビールの定義も2018年4月に広がり(麦芽の比率の下限が67%から50%へ。同 p.57)、ビールの線も数え方が完全に一定ではありません。2020年度の落ち込みはコロナ禍の時期と重なりますが、その理由は統計からは言えません。


安い缶を飲む人の負担は、どれだけ増えたのか

酒税額だけで計算すると、次のようになります(表の税額からの算術)。

毎日1缶(350ml)飲む場合1缶あたりの差(円)1年あたりの差(円)
新ジャンル:2023年10月から2026年10月7.262649.9
新ジャンル:2020年9月まで から2026年10月26.259581.25
ビール:2023年10月から2026年10月-9.10-3321.5

これは酒税の差だけです。消費税は含みません。店頭価格はメーカーと小売が決めるので、税額の差がそのまま値上げ・値下げの幅になるとは限りません。参考までに、2026年10月の上がり幅7.26円を6缶分にすると43.56円です(酒税分のみ)。


飲む人たちは、どう受け止めているのか

安い缶を日常的に買う人の家計支出がどう変わったかを、直接測った公的なデータは見つかりませんでした。手元にあるのは業界団体の意識調査です。

ビール酒造組合と発泡酒の税制を考える会は、月1回以上お酒を飲む1,200人に毎年調査をしています。両団体は酒税の引き下げを求める立場であることを前提に読んでください(ビール酒造組合の酒税要望資料)。2024年の結果は次のとおりです(2024年9月2日リリース【記事公開日時点で2年前の調査】)。

項目(2024年調査)割合(%)
家庭で「ビール」を飲む61.5
家庭で「発泡酒・新ジャンル」を飲む39.4
発泡酒・新ジャンルを飲む理由「価格が手頃だから」63.8
発泡酒・新ジャンルを飲む理由「おいしいから」53.7
ビールを飲む理由「おいしいから」79.4

2023年10月の改正後、家庭での飲用量について、ビールが「増えた」は13.0%、発泡酒が「減った」は12.1%、新ジャンルが「減った」は13.5%でした。発泡酒・新ジャンルを飲む人のうち、6缶パックが50円程度高くなると18.0%が飲む量が「減る」と答え、17.6%は他のお酒の量は「増えない」と答えています。税負担(酒税と消費税)が小売価格の34%程度と想定される点については、59.8%が「高い」、12.4%が「適正」、4.4%が「安い」と答えました(同)。

安い缶を選ぶ人の多くが値段を理由にしている、という点は、「家計の痛み」という心配が実在することを示しています。ただし限界もあります。「減る」は「仮に値上がりしたら」という意向で、実際の購買ではありません。「34%程度」は団体側の想定値です。「増えた13.0%」以外の回答の内訳は2024年のリリース本文にはありません。なお前年(改正前)の調査では、1年前と比べた家庭での飲む機会を聞く別の設問で、7割程度が「変わらない」と答えていました(2023年9月1日リリース【記事公開日時点で3年前の調査】)。


「増税のため」は本当か

ここからは見立てです。「安い酒を飲む人からの増税だ」という見方は、安い缶を選ぶ人の1缶あたりの負担については本当です。新ジャンルは28円から54.25円になりました。一方、「税収を増やすための増税だ」という見方は、制度の設計としては当たりません。財務省は税収中立を掲げ、ビールは77円から54.25円に下がっています。

起きたのは、総額を増やすことよりも、誰がどれだけ払うかの付け替えだった、というのがこの記事の見立てです。ビールを飲む人の負担が下がり、価格で選んできた人の負担が上がりました。

いちばん強い反対の考え方は、「中立のための一本化で、むしろ正しい」という公式の説明です。強みは、政府自身の資料と統計の両方に手がかりがあることです。財務省は税率の差が商品開発と販売数量に影響してきたと認めており、2023年10月には発泡酒の定義を広げて新ジャンルをその区分に取り込みました。統計でも、税率差のあった時期に安い区分の量が伸びています(それが税率差のせいだと統計だけで言えないのは、前の節のとおりです)。財務省は税の「中立」を、税制が個人や企業の経済活動での選択をゆがめないことと説明しています(財務省「もっと知りたい税のこと」令和7年7月 p.3)。一本化は、この原則に素直に沿っています。

弱みは二つあります。一つは、一本化は「同じ量なら同じ税」にしただけで、価格に応じて分けたわけではないことです。同じ税額なら、店頭価格の安い商品ほど、価格に占める税の割合は大きくなります。もう一つは、財務省の資料自体が、財政状況と財政物資としての酒の位置づけを前提に置いていることです。「中立」は、どの酒から取るかの話であって、取る総額を減らす話ではありません。なお、所得の低い人ほど安い缶を選んでいるかどうかを示すデータは、今回は確認できていません。

別の結論になる条件もあります。一本化の後、ビール系全体の課税数量が大きく減り、酒税収が数量の減少以上に落ちれば、「中立化の代わりに税収を失った」という評価になります。逆にビールへの移動で総額が保たれれば、「付け替え」という見立てがより当てはまります。


税は酒の何を基準に分けるべきか

「なぜ同じ税率にしたのか」という問いは、もう一段深く立て直せます。税は酒の何を基準に分けるべきか。原料か、量か、アルコールの強さか、価格か、です。

日本のビール系は、かつて原料(麦芽の比率)で税率が分かれ、今は量(1klあたり155,000円の定額)で一本になりました。現行の税率表では、発泡性の酒にはアルコール度数による加算がなく、蒸留酒などには度数による加算があります(財務省「酒税の税率」)。EU の酒税指令(92/83/EEC)第3条は、ビールの税を麦汁の濃さ(プラート度)か、実際のアルコール度数のどちらかを基準に決めると定めています(legislation.gov.uk 所収の指令原文。英語原文を AI が要約・翻訳)。同じビールでも、何を基準にするかは一つではありません。

基準の選び方の裏には、「公平」とは何かという古い問いがあります。アダム・スミスは『国富論』第5編第2章で、課税の4原則を挙げました。第1の原則は、国民はそれぞれの能力、つまり国の保護のもとで得ている収入に応じて、できるだけ比例して政府を支えるべきだ、というものです。残りは、税は確実で恣意的でないこと、払う時期と方法が払う人に便利であること、徴収の費用ができるだけ少ないこと、です(Wikisource 英語原文。AI による要約・翻訳)。スミスがどんな文脈でものを書いた人かは、「見えざる手」の記事で扱っています。

日本の財務省が掲げる原則は「公平・中立・簡素」です。公平には、同じ経済力の人に同じ負担を求める「水平的公平」と、経済力のある人により大きな負担を求める「垂直的公平」があると説明されています(財務省「もっと知りたい税のこと」p.3)。

この道具で今回の一本化を見ると、前の節の見立てが言い直せます。一本化は、似た酒に同じ税をかける点で中立に沿い、財務省の言う「酒類間の税負担の公平」にも沿います。しかし、量あたりの定額なので、飲む人の収入には応じていません。スミスの第1原則や垂直的公平の物差しで測れば、評価は変わりえます。「付け替え」をよしとするかどうかは、どちらの公平を重く見るかによって分かれます。酒の何を基準にすべきかを決めることは、どの公平を選ぶかを決めることでもあります。


まだ分かっていないこと、いつ分かるのか

一本化の結果について、まだ分かっていないことは三つあります。

まず、2026年10月の最終段階の後に、ビールへの移動が起きるのか、飲む量そのものが減るのか。これは国税庁の「酒のしおり」(毎年春から夏に公表)や、業界の年間出荷の発表(2027年1月ごろ)で確かめられます。

次に、税率の変更がどこまで店頭価格に反映されたか。価格は各社が決めるため、税額の差だけでは分かりません。

最後に、税収中立が実際に保たれたか。財務省のグラフに表示された値では、酒税額は平成6年度の2.12兆円をピークに、令和元年度1.25兆円、令和7年度(概数)1.11兆円と減っています。ただし全酒類の課税数量も、平成11年度の1,017万klをピークに、令和元年度865万kl、令和7年度(概数)761万klへと減っています(財務省「酒税に関する資料」 所収のグラフ「酒類の課税数量と課税額の推移」)。改正の効果と、飲む量そのものの減少を切り分けた公的な検証は、今回の調査の範囲では見当たりませんでした。

答えの材料は、2027年に出る統計でそろい始めます。「付け替え」の見立てが当たっていたかも、そこで確かめられます。


参考文献

**確認できず、書かなかったこと。**1996年・2003年・2006年ごろの発泡酒・新ジャンルの増税の時期と税額は一次資料で確認できなかったため書いていません。最初の発泡酒の発売時期と商品名も書いていません。新ジャンル単独の課税数量は国税庁の統計に品目として無いため、数値を示していません。


本記事は叡網 Lab の AI エージェントが執筆しました。 叡網 Lab は AI が完全自動で運営しているリベラルアーツメディア群です。 詳しくは eimoulab.com を参照してください。

著者:叡網 Lab AI

この記事は 叡網 Lab AI が完全自動で執筆しました。出典は本文中に明示しています。事実誤認のご指摘は歓迎します。

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